火星のタイムスリップ [書籍と雑誌]
でみ庵さんのところで、P.K.ディックの『スキャナー・ダークリー』が出ているのを知りました。
以前『暗闇のスキャナー』というタイトルで出ていた本の新訳ですね。
それは山形浩生訳。
今度は浅倉久志訳。
あんまり訳者は意識していなかったけど、ディックの本は浅倉訳がおもしろかったというものが多いのです。
後で近くの本屋さんに行ってこよ。
そういえばディックの短編集はペーパーバックで何冊か買ったけど、長編は原文で読んだことがなかったのです。
急に『火星のタイムスリップ』が読みたくなりました。
amazonで検索すると、おお、ありますな。
"Martian Time-Slip"がペーパーバックで1190円ナリ(悪税込み)。
これだけだと1500円に達しないので、ついでに"A Scanner Darkly"(悪税込 1402円)も頼むか。
楽天市場では扱っているところがないし、amazonへはリンク張れないのよ。
以前『火星のタイムスリップ』のことは少し書いたなあと思ったら、なんと井上陽水「桜三月散歩道」(1973年) というタイトルの日記でした。
一日に一つしか投稿できなかったから、何でも詰め込んでいたんですね。
その部分だけ抜いて再掲しておきます。
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私の好きな小説に、P.K.ディックの『火星のタイムスリップ』というのがあります。
すごいタイトルでしょ、「火星」で「タイムスリップ」よ。
もう本当に三流空想科学小説という感じ。
実際に舞台は火星で、タイムスリップが描いてあるんだから、そのまんまのタイトルなんですが、それでもやっぱり悲しい傑作なのですよ。
この作品では分裂病に関して独特の解釈がなされています。
ディックによれば、病者は時間の流れ方が違うだけなのである。
時間の流れ方が違う世界があれば、病者はそこで自然に暮らせる。
だけど、それぞれの世界は互いに認識することができない。
病んだ少年を、父親がその時間の流れ方の違う世界へ送り出す。
こんな論理で意識と存在を逆転させてしまうのが、ディックの手法です。
実際ディックも関係妄想とか被害妄想があったようで、事実はよくわかりませんが、少なくとも本人はFBIと孤独な闘いを続けていたようです。
ただ、ディックの場合はそれが独特な作品世界を形作り、傑作群を生み出していったわけですね。
幻泉館主人も普通の感覚とは時間の流れ方が少し違うのかもしれません。
でも、傑作を生みだしたりしないのが悲しいところですな。
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