ハリケーン CHRONICLES #316 [ボブ・ディラン『クロニクルズ』]
帰るべき時が来たと言いながら、サン・パイとの対話が続きます。
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"There used to be racetracks and stables around here," he said. "A hurricane came through about a hundred years ago, water twelve feet high. Two thousand people gone -- lost their lives. When the storm comes, you beg the Master, 'If you just keep me from gettign killed, I'll do anything you say.'"
「昔はこのあたりに競馬場と厩舎があったんだ」と、彼は言った。「百年ほど前にハリケーンが来て、水位が12フィートも上がった。二百人の人がいなくなった……亡くなったんだ。嵐が来たら、主に祈るんだ。『死なずに済んだら、おっしゃることは何でもします』」
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実際に昨年のニューオーリンズの惨状を知っているので、このサン・パイの言葉が重く感じられます。
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"Whom the Master wishes to kill, the Master kills."
「主は殺したいと思った者を、殺す」
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サン・パイは祈るしかないと言うのですが、でも、あれは人災だったのではないでしょうか。
行政がきちんと対処していれば、かなりの人数の命が救えたことでしょう。
私は小さな頃、狩野川という川の近くで暮らしていました。
狩野川台風という有名な台風は記憶にないのですが、橋桁に水死体がひっかかたりしていたそうです。
その翌年の伊勢湾台風を最後に、日本では大規模な台風災害はなくなったということです。
治水や防災体制が整ったからですね。
私も狩野川の氾濫が一度だけ記憶に残っています。
以前書いたことがあると思いますが、近くの神社に避難して、一夜を明かしました。
逃げて行く時、既にどぶがあふれていました。
社務所のようなところに泊まったのですが、鳥籠にカナリアがいたことを覚えています。
夜が明けると、空はもう晴れているのですが、国道一号線が川のようになっていて、ゴムボートで行き来している人達がいました。
たぶんまだ買って間もないテレビが水に浸かったので、基盤をむき出しにして縁側で乾かしました。
父や母が買っていた文学全集も水に浸かったので、乾かしたはずです。
今も、その痕が本に残っています。
ただいまp.207です。
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