最期の風景 [日常雑記]
崖から転落死した漫画家のカメラは、電源が入ったままになっていたそうだ。
最後の一枚は、崖の上から下を覗き込んだ写真。
この撮影をした直後に滑落したのではないかと報道されている。
最期の風景。
彼が本当に最期に見た風景はわからない。
撮影された風景そのものではないのだろうが、きわめて近い風景だったはずだ。
学生時代、8ミリ映画を撮った。
もちろんフィルムの時代だ。
主人公が山百合を採りに行って転落死するという、少し前のケータイ小説みたいなしょうもない映画。
岩を登る場面や、落ちる瞬間は簡単に撮影できた。
困ったのは、落ちた後だ。
どうしよう。
結局、主人公役の友人には、草の生い茂る河原に横たわってもらった。
明るい緑の中で眠らせたのだ。
→幻泉館日録:マイム・マイム
私の父は何ヵ月か入院して、家族の見守る中で静かに息を引き取った。
父が最期に見た風景は何だったんだろう。
病室の天井だろうか。
やけに台風の多い年だった。
広い窓に吹き付ける雨だったかもしれない。
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