劇画・毛沢東伝 [マンガ]
『カムイ伝』が表紙に描かれている「ガロ」を発掘していたら、一緒に懐かしいものが出てきた。
そのうちの一冊が、1971年発行の週刊漫画サンデー増刊『劇画・毛沢東伝』。
「特価180円」と表記されているが、当時中学生だった私が買ったわけではない。
ずっと後になって古本で入手したはずだ。
検索してみると、驚いたことに2003年に復刻されている。
amazon.co.jpのカスタマーレビューがおもしろい。
呉智英さんが解説を書いているそうだが、「解説で呉智英が、政治と芸術の独立を主張し、この作品を救おうとしている」ことに異を唱えるレビューが付いている。
この作品は政治に奉仕したのではないかと。
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By モワノンプリュ (Japan)
……実際、呉は彼の解説を、「毛沢東は、まちがいなく、ある時代にこのように語られ、その語られ方はこのように感動的であった。そして今もその感動は『劇画 毛沢東伝』によって伝えらるのである」と結ぶ。だとしたら、この作品の表現は時代に拘束され、政治に奉仕したのではないのか?
たとえばp38。黒バックに白ヌキで、「鉄砲から/政権が/生まれる」と大書されている。あるいはp152に「あやまりを正すには/度をこさなければならない!」とある。ラストは孫文の言葉「革命いまだ終らず!」を背にする毛沢東の姿。言葉だってマンガ・劇画の要素だ。とにかくこの劇画の言葉の量は圧倒的で、絵を突き破るようにしてコトバ、コトバ、コトバがあふれ出ているのだ。この作品が赤軍派立ち上げとほぼ同時代のものであることを考えたなら、そして連合赤軍事件の顛末を知る今であるなら、呉が書き付けるほどにアッケラカンと、悪びれもせず、表現の自律を言えるものなのか。
私は作者を、この作品のゆえに弾劾しようとは思わない。しかしだからといって、作者が無罪であるとは思わない。「漫画サンデー」の販売拡張策として、当時の青年層の気分に迎合する形で、文革の神聖化に加担してしまったことに、責任はあると思う。水木しげるの「劇画ヒットラー」の老獪さと比べて考えてみればいい。
私は、政治と芸術の独立によってこの作品を救いたいとは思わない。むしろ、芸術なるものの危険性を知るためにこそ、この劇画を読むべきだと思う。もし読むのなら、だが・・・
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このレビューに対して、さらに冷静なコメントが付いている。
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ケロヨンさんのコメント:
マンガとは描かれた時代を反映する生ものである以上、現在このマンガを読んで当時を批評するなら的を射ているがマンガの中味をあれこれと批評する行為は後だしじゃんけんでしょう。水木氏との比較にも意味がない。これがかかれた当時は世界中でヒトラーは戦争犯罪人で毛沢東は英雄だったという情報しかないのだから。よって現在これを読みマンガの中味を批評し作者を批評するよりも当時の時代性を読み解くという冷静な判断、分析をしたい方が読めばいいのよ。マンガとして非常に良くできてますよ。
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amazon.co.jpのレビューにおけるやりとりとしては、おもしろいものだった。
さて、復刻された本には収録されているのかどうか。
この増刊号には、グラビアや読み物のページがある。
表2には「中共政権機構図」目次があり、本文1ページから4ページまでが、小山内宏監修「毛沢東の軍隊」という写真ページだ。
まだ四人組以前、人民解放軍を率いるのは、毛沢東と林彪だ。
二人がにこやかに並んで座っている。
奥付では1970年6月30日発行。
林彪が墜落死するのは同年9月13日のことである。
→Wikipedia: 林彪事件
本文279ページ以後が読み物。
「人間・毛沢東」高木健夫(読売新聞論説室顧問)
「随筆 私と中国」
人間性を感じさせる中国 富島健夫(作家)
中国旅行懐かしのスカート編 園山俊二(漫画家)
感情も勘定もこまやかな中国人 草柳大蔵(評論家)
身ぶるいした国慶節パレード 福地泡介(漫画家)
毛沢東と語録 駒田信二(中国文学者)
「劇画・毛沢東伝 関連地図
「毛沢東をめぐる19の赤い星 文革後の中国指導陣」
最後の指導陣は、柴田穂サンケイ新聞前北京支局長によるもので、顔写真入りの中国指導者が並ぶ。
最初は「中国の赤い太陽」毛沢東党主席(78歳)、二番目が「毛沢東の後継者」林彪党副主席・国防相(64歳)、三番目に「天性の政治家」周恩来党政治局常務委員・首相(73歳)の順となっている。
ページをめくって八番目に「毛沢東婦人」江青党政治局員(58歳)が登場する。その後に「江青サロンのプリンス」姚文元党政治局員(45歳)、二人挟んで「宣伝工作の古参幹部」張春橋党政治局員(68歳)が続くが、四人組の残りの一人王洪文は登場していない。
表4ページには、実業之日本社が出していたホリデーコミックスの自社広告が掲載されている。
あ、これゾッキに回ったんですな。
高校生の頃古本屋さんで買ったものが多いです。
漫画サンデーという雑誌自体はおじさん向けという感じで縁がなかったのですが、これはかなり買いました。
捨て値で売っていたもので。
赤塚不二夫『天才バカボンのおやじ』第1巻・第2巻
藤子不二雄『黒イせぇるすまん』
手塚治虫『ペックスばんざい』
手塚治虫『上を下へのジレッタ』
水木しげる『ケカキイキイ 』
サトウサンペイ『花の都の弱いやつ』
黒鉄ヒロシ『ひみこーッ』
広告に載っているものでは、これぐらい買いました。
探せば少しは出てくるのかな?
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