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赤頭巾ちゃん気をつけて #2 [日常雑記]

駅の階段ですべって転んだ。
いや、転びそうになったのを、なんとか踏ん張った。

その後足が痛いなぁと思いながら半日歩き回った。
帰ってから靴下を脱ぐと、親指の付け根に内出血が見えて、少し腫れている。

私は三十代の間だけ痛風だったのだが、その発作ほどの痛みではない。
それでも歩くには不自由だ。

『赤頭巾ちゃん気をつけて』を思い出す。
あれは足の親指が痛い青年のお話だ。
人の流れについていけない。
いずれにせよ自分の速さで歩くしかない。

ほんの少し足が痛いだけで、急に社会から浮き出たように思えてくる。
P.K.ディックの世界では、他人と時間の流れ方が違うことを分裂病と呼んでいた。
人混みの中で時間の流れ方が違うと、私は突然不可視な人間、透明人間になってしまう。

晩年の親父様が、健康のためと言って散歩をしていた。
何事にも極端な人なので無闇に歩き回って足がつり、動けなくなった。
倒れて助けを呼ぶのだが、声が枯れて、吼えているように聞こえたのかもしれない。
知り合いが通りかかるまで放っておかれた。
この場合は少しの間だけ不可触な人になっていたのだ。

足を踏まれた者の痛みは、踏んだ者にはわからない。
とにかくそれで今日は一人でびくびくしている。

 →幻泉館日録:赤頭巾ちゃん気をつけて

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