逆髪 CHRONICLES #473 [ボブ・ディラン『クロニクルズ』]
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Dave looked up, peering at me over a pair of horn-rimmed glasses. I had the thick acetate of the Robert Johnson record in my hands and I asked Van Ronk if he ever heard of him. Dave said, nope, he hadn't, and I put it on the record player so we could listen to it. From the first note the vibrations from the loudspeaker made my hair stand up.
デイヴは顔を上げて、ホーンフレームのメガネ越しに僕をじっと見た。僕は手にぶ厚いアセテートでできたロバート・ジョンソンのレコードを手に持って、聴いたことがあるかとヴァン・ロンクに尋ねた。デイヴが一度も聴いたことがないと答えたので、聴けるようにレコードプレイヤーにそれを載せた。拡声器からの振動の、その最初の音から、僕の髪の毛は逆立った
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ホーン(角)フレームのメガネというのは、べっ甲みたいに見えるやつですね。
楽天市場で検索すると、「絶滅危惧種バイソンの角で出来たメガネフレーム」というのがヒットしまして、89,250円(悪税込・送料別)だそうです。
もっとも、プラスチック製でも外見が似せてあれば「ホーンフレーム」と呼ぶようです。
ヴァン・ロンクのメガネが本物の角だったのかどうかはわかりません。
もちろんディランの髪の毛は静電気で逆立ったのではありません。
霊界アンテナならぬ、音楽アンテナがビビビと反応したんですな。
そういえば、当時のディランって、寝癖がすごそう。
歌舞伎十八番の内「毛抜」では、天井裏に潜んだ忍者が、磁石を使って鉄の簪を吸い寄せ、姫の髪の毛を逆立てます。
そんなアホな。
この、髪が逆立つという奇病は、謡曲の『蝉丸』にも登場します。
私は小さな頃、百人一首の絵札の中で妙に蝉丸がお気に入りでした。
異形というところが良かったのでしょうか。
長じて、フィクションとはいえ蝉丸には逆髪という、さらに異形の姉がいたと知って驚きました。
70年代末の日本には、DEPというゼリー状の整髪料で髪を逆立てる若者が出現しました。
蝉丸姉の逆髪には歴史から消される者の怒りや憤りが象徴されていたようですが、あの頭髪は何だったんでしょうか。
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