赤い雪 [書籍と雑誌]
少年が河童にからかわれる。
「人間だって、猿のふったちじゃないか」
「ふったち」とは、常識を越えて長生きをした動物が変化した魔物のことだ。
「経立」と書く。
こんな『遠野物語』の世界を紹介してくれたのは、『ガロ』に4コマを連載していた、勝又進さんのマンガだった。
4コマとは別に、少年が動物やモノノケたちと暮らすようなマンガを描いていた。
都会に出た少年の目が荒んでいくのをタヌキが悲しがったりする、懐かしいマンガだ。
後から知ったことだが、勝又さんは3年ほど会社勤めをしてから東京教育大に入学したそうだ。
大学院では原子核物理学を専攻している。
勝又さんのマンガに、まじめそうでいて妙に浮世離れした印象を受けるのは、そんなせいもあるのかもしれない。
高文研から脱原発の本を出しているのを知っていたのだが、『ガロ』以降の勝又さんのマンガは読んだことがなかった。
だから、日本漫画家協会賞という賞を受賞したというニュースには、ちょっと驚いたのだ。
早速2冊買い込んだ。
勝又さんは私の知らない70年代後半から80年代も、遠野に繋がる話を描いていたのだなあ。
『赤い雪』はつげ義春さんの「紅い花」に少しだけ畑中純さんの「まんだら屋の良太」の雰囲気を足したような作品集。
栄えている旅館街ではなくて、滅んでいく寒村のイメージ。
私が読んだ『ガロ』時代の作品が載っていないのが、少し残念だった。
そういえば、東京教育大という大学は、日本国が滅ぼした大学だったなあ。
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