せめて二十歳若ければ CHRONICLES #210 [ボブ・ディラン『クロニクルズ』]
ああ、あと二十歳若かったらなあ。
およそディランの言いそうにないことです。
ところが、一からやり直す決意をしたディランは、ふとそんな言葉をもらします。
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I wished I was at least twenty years younger, wished that I had just dropped on the scene all over again. But what could you do? I would have liked some help, but I didn't expect any.
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実際のディランは既に大御所で、名声を勝ちえています。
だからこそ好きにツアーを組むことができるのですが、それでも以前のトラブルから、かかわりたがらないプロモーターも多かったそうです。
当時のディランは四十代後半にさしかかったところです。
そうか、今の私より若いんだ。
全部ご破算にして一からやりなおしたいという気持はわかります。
でも、既に頂点を極めたように見える人物が、同じ「歌」で最初からやり直したいというのは、想像を超えたところにあります。
それも、岡林信康さんのように過去の自分を清算してしまおうというわけでもないようなのです。
せめて二十歳若かったら。
新しく登場したばかりだったらよかったのに。
ディランがふともらした言葉が、妙に心に残りました。
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