三年たったら CHRONICLES #209 [ボブ・ディラン『クロニクルズ』]
トム・ペティとのツアーを終えると、引退の意志は覆っていました。
あの自然な歌唱法ではなくて、ロカルノ広場でひらめいた表現方法、それで一からやりなおそうという気になっていたのです。
グレイトフル・デッドとのコンサートを突っ込んだエリオット・ロバーツと、ロンドンのセント・ジェームズ・クラブで会いました。
トム・ペティとのツアーも、この人がやっていたんですね。
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I told him I needed to work two hundred show dates the next year. Elliot was pragmatic, said that I should take a couple of years off and then come back.
" The picture is perfect like it is," he said. "Let it be."
"No," I said. "It's not perfect and I have to correct this."
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日本語でも計画を立てることを「絵図を引く」と言ったりしますが、それに似てますね。
しっかりと長い休みをとって、じっくり計画を練ってからツアーをすべきだとエリオットは言うのですが、ディランは聞きません。
トム・ペティとのツアーが終わったのが12月。
その直後に、二人はビールを飲みながら相談をしています。
エリオットは、せめて春まで待てと妥協案を出します。
確かに、エリオットに考えてもらう時間も必要でしょう。
ディランはそれで納得します。
エリオットはバンドを準備しておこうと言ってくれます。
これにディランは喜んでいます。
他の誰かが自分のためにバンドを用意してくれるなんて、考えたこともなかったのだそうです。
アルバム"New Morning"を録音した時はおまかせだったような気もするのですが、スタジオ録音とツアーは違うということなのかしら。
さらにディランは、その翌年と翌々年、つまり三年間に渡って同じ場所でコンサートを行なうスケジュールを要求します。
年間200回のコンサートツアーを、三回繰り返すというのです。
すごいですね。
ディランの心積もりでは、最初の年にはまだ新しいことは始まらないのです。
三年経てば、年配の古い観客が来なくなり、新しい若いファンに入れ替わるだろうと考えました。
つまり、ディランは未来のことを真剣に考えるようになっていたのです。
三年というのは、妙にリアリティがありますね。
泉谷しげるさんのエレック時代の曲、「帰り道」を思い出しました。
♪ 三年たったら楽になれるというから
♪ 僕はがまんして働いてきた
♪ いろんな人にどなられても
♪ こずきまわされても
♪ 三年たったらというから
♪ 三年たったのに 三年 三年たったのに
♪ もうもう三年たったのに
つらい歌です。
私の場合はだいたい三年ぐらいでいやになって会社を辞めることが多かったですね。
ダメじゃん~。
p.155に入りました。
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