胡蝶の夢 [日常雑記]
出かけようと玄関を出ると、梅の木からレモンの木へ、ぱたぱたとゆっくり、モンシロウチョウぐらいの大きさの黄色い蝶が飛んでいった。
雨の中、鮮やかな黄色い羽根を見ながら、「父さんだ」と思った。
もちろんそんなわけはない。
でも、突然そんなふうに思ったのだ。
やけに台風の多い年だった。
9月も10月も、静かな病室の大きなから、雨を眺めていた。
数日前に峰岸徹さんの訃報を読んだからだろうか。
腰痛で入院して癌だとわかり、そして65歳で亡くなった。
うちの親父とまったく同じだ。
父の癌を発見したのは、医者ではない。
入院先の同室の仲間たちが、急に衰弱していく父を心配して、転院を勧めてくれたのだ。
私も呼ばれて、あわてて東京から戻った。
市立の総合病院で病室を確保したが、父が入院している整形外科の医師は、直接の転院を認めなかった。
一旦別の整形外科へ転院しろという。
父はもう自力で動けなくなっていて、余計な検査も大きな負担になるというのに。
間に入った病院の医師は具体的なことを何も教えてくれなかったが、カルテに「cancer」と記入するのは、ちゃんと見えた。
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