ミスター・タンブリン・マン CHRONICLES #494 [ボブ・ディラン『クロニクルズ』]
ディランが"It's Alright Ma (I'm Only Bleeding)"に続けて挙げている"Mr. Tambourine Man"なんですが、これがまたよくわかりません。
→bobdylan.com: Mr. Tambourine Man
リーダーズ英和を引いてみると、おもしろいことが書いてあります。
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tambourine man
n. 《俗》 麻薬の売人.
[Bob Dylan の歌 'Mr. Tambourine Man' から]
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「Mr. Tambourine Man」はタンブリン奏者以外の何者でもないはずです。
少なくとも、ディランが歌うまでは。
♪ Hey! Mr. Tambourine Man, play a song for me,
♪ I'm not sleepy and there is no place I'm going to.
♪ Hey! Mr. Tambourine Man, play a song for me,
♪ In the jingle jangle morning I'll come followin' you.
♪ ねえ、ミスター・タンブリン・マン、ぼくのために一曲やっておくれ
♪ ぼくは眠くないし、行くあてもないんだ
♪ ねえ、ミスター・タンブリン・マン、ぼくのために一曲やっておくれ
♪ ジンジャカ鳴り響く朝の中、ぼくはあんたについていくよ
(中川五郎訳「ミスター・タンブリン・マン」)
タンブリン(タンバリン)奏者に、「一曲やってくれ」と言うのも、なんだか変ですね。
音楽を聴きたいのではなくて、「ぼく」を踊らせてくれ、行動へ誘ってくれと頼んでいるのです。
♪ Take me on a trip upon your magic swirlin' ship
「あんたの魔法渦巻く船に乗っけてぼくを旅に連れ出しておくれ」
♪ Into my own parade, cast your dancing spell my way
「自分自身のパレードの中へと、ぼくの行く手に踊りの魔法をかけておくれ」
♪ Then take me disappearin' through the smoke rings of my mind
「ぼくの心の中に浮かぶ煙の中へとぼくを消し去っておくれ」
なるほどなあ、出来合いのスラングを使ったのではなくて、ディランが作った歌によって、タンブリン奏者が麻薬の売人になってしまったわけです。
ただ、この歌に関しては、なんといってもまずThe Byrdsの演奏を思い浮かべてしまいますね。
あの12弦ギターの音が、時代の雰囲気を伝えているように感じます。
さて、"It's Alright Ma (I'm Only Bleeding)"と"Mr. Tambourine Man"が並んでいるだけなら、そんなにひっかかることはなかったのです。
なぜディランは、その後に"Lonesome Death of Hattie Carroll"を続けたのでしょうか。
言葉の象徴的用法が、違うように思うのですが。
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