瞬間の王 CHRONICLES #224 [ボブ・ディラン『クロニクルズ』]
>私のなかにあった「瞬間の王」は死んだ。
谷川雁さんが国文社版詩集のあとがきに書いた言葉です。
>人々は今日かぎり詩人ではなくなったひとりの男を忘れることができる。
私は今、潮出版社版『定本 谷川雁詩集』でこれを確認しました。
奥付では昭和53年(1978年)2月25日発行。
潮出版社は創価学会系とされる出版社ですが、当時は精力的に「新左翼」系の本も出版していました。
70年代、彼の政党は反戦平和勢力だったのです。
詩を捨てて「人生」を選んだ、アルチュール・ランボーという永遠の青年のことも思い出します。
もしかしたら書き殴っただけなのかもしれない断片の一行に、私たちは永遠を見いだしたりします。
太陽と一緒に行ってしまった海を。
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Outside I heard a woodpecker tapping up against a tree in the dark. As long as I alive I was going to stay interested in something. If my hand didn't heal, what was I going to do with the remainder of my days?
外からは、暗闇の中で啄木鳥が木を叩いている音が聞こえた。生きているかぎり、僕は何かに興味を抱き続けるのだろう。もしも手が癒えなかったら、僕は残りの人生をどうすればいいのだろう。
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手が痛くて、気弱になってしまったのですね。
もしも演奏ができなくなったら、もう音楽の世界にとどまりたくはないと思ったようです。
できるだけ音楽とはかけはなれた、遠い世界。
そう、実業界に入ったらどうだろう。
ディランは漠然と想像するだけでなく、実際にどんなビジネスがいいだろうと考え始めます。
なんだかつげ義春さんのマンガのようでもあります。
p.164に入りました。
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