樹村みのり「贈り物」(1974年) [マンガ]
本屋さんで樹村みのりさんの本を見かけなくなったのはいつごろだろうか。
80年代には、小学館フラワーコミックスの短編集『ポケットのなかの季節』の第1巻と第2巻が普通に買えたのではないかと思う。
ブロンズ社が倒産した後、その業務を引き継いで仕事をしていたことがあるが、その時にブロンズ社から出ていた『菜の花畑のむこうとこちら』をもらった。
樹村さんの作品はなんだか悲しみのクサビのようなものを読み手の心に残してしまう作品が多いのだけれど、「菜の花畑」のシリーズは明るくてあまり悲痛なエピソードが出てこないので、読みやすい。
この「菜の花畑」のシリーズが樹村みのりさんの代表作と言っていいのかな。
「菜の花畑」の「森ちゃん」みたいな女の子、どこにでもいそうだけど、意外に少ないのです。
無垢な子供の心を持った普通の子。
そう、無垢な子供の心、これが70年代の樹村みのりさんの作品に通じるテーマだろう。
『ポケットのなかの季節』は2冊とも買ったのに、どこかに行ってしまった。
特に一巻目は表紙が片思いをしていた誰かさんに見えたので、結構必死になって古本を探したかもしれない。
元々のフラワーコミックスは手に入らなかったけれど、第一巻の表紙の絵をデザインしたフラワーコミックスワイド版をヤフオクで落とすことができたのだった。
それでふと思いついてgoogleで検索したら、見つけました。
http://www.iff.co.jp/book/c.html
IFF出版部ヘルスワーク協会というところで、短編集を4巻出しているのですね。
樹村さんは「運動」の方に行ってしまったのでしょうか。
それで普通の出版社から本が出ないというのは、考えすぎかな。
『樹村みのり作品集「菜の花畑編」菜の花畑のむこうとこちら』
『樹村みのり作品集「子ども編」悪い子』
『樹村みのり作品集「少女編」海辺のカイン』
『樹村みのり作品集「女性編」母親の娘たち』
各1500円ですが、早速発注いたしました。
まだ読んだことのない作品が入っている模様。
【追記】
いやあ、失敗。
普通にamazon.co.jpで注文できます。
【さらに追記】
もう届きました♪
amazonより速かったです。
樹村さんのマンガを熱心に読んだのは大学生の時、70年代後半です。
私は親戚のお姉ちゃんたちのマンガを読んでいたので抵抗なかったけど、当時むくつけき男子大学生の間で、少女マンガを読むのがはやりました。
石井隆さんのマンガをかっこつけて読むのと同じで、多分にスノッブなところがあったと思います。
ことさらに「りぼん」だったりするわけです。
連中は「りぼん」の付録はどうしたんだろう。
陸奥A子さん、太刀掛秀子さん、田渕由美子さん、一条ゆかりさん、土田よしこさん……。
ああ、懐かしいわ、私もよく読んでたんだ。
私がいた大学の近くに都電の駅(停留所か?)があって、その横を抜けて坂を上ると高級住宅地。
田中角栄さんのお宅の前にある女子大には、高橋留美子さんがいました。
在学中にデビューし、1978年には『うる星やつら』の連載が「少年サンデー」で始まります。
『うる星やつら』というといわゆる「をたく」の発生、80年代のイメージがありますが、70年代の後半に始まっているのです。
もちろん私も楽しく読んでいたのですが、ここまで行くとどうも幻泉館には似あわない。
せっかくだからなぞっておくと、1978年には吉田秋生さんの『カリフォルニア物語』が出現します。
おそらく後年の『BANANA FISH』の方が評価が高いのだろうけど、同じ70年代に呼吸した者として、私はこちらの方が愛着があります。
途中で吉田さんの描く絵が急に変わってしまうのも、ハラハラしました。
男の肉体を描くようになっちゃうんだよね。
ああ、大島弓子さんの『綿の国星』もそのころだ。
当時大島さんは井の頭公園の西側(井の頭公園の間というべきか)にあるパークサイド・マンションにいらしたのです。
いつかあんなマンションで暮らせたらいいなあと思いましたっけ。
それから天才高野文子さんや大友克洋さんが登場するのですが、それもまたいつか。
今並べたような、時代を特徴づけるようマンガ家の名前と比べると、樹村みのりさんはとても地味な印象を受けます。
1980年ごろに起きた、まさにマンガのニューウェーブとも言える大ブレイクからは完全に外れた、旧世代に見えます。
浮浪者と夢を分かちあう子供たちを描いた「贈り物」は、1974年の「別冊少女コミック」に掲載された作品。
世間的には単なるホームレスであるおじさんから、お別れに「天国への切符」を貰う子供たち。
それは人を信じる無垢な心の象徴であります。
その切符をいつまでもポケットの中にしまっている子供たちの、その後を語るページで樹村さんはさりげなく書いている。
> もう一人は
> 72年の年の2月の
> 暗い山で
> 道に迷った
これが連合赤軍事件のことだとすぐにわかる人は、今では少ないのだろう。
1974年当時の「別冊少女コミック」の読者にも、わかる人は少なかったかもしれない。
いつまでも「天国への切符」を大切に持っていたからこそ、子供たちの一人は道に迷ってしまったのだと、樹村さんは言っているようです。
おそらくは彼は同志によって「総括」を要求され、殺されてしまったのでしょう。
樹村みのりさんも、連赤事件を忘れることのできない、いつまでもポケットの中に切符を持ち続ける作家だったのです。
そんなだから寡作だったんだろうなぁ。
もちろん「樹村みのり=連合赤軍」と言っているのではありませんよ。
近頃はそんなことまでベタベタ説明しないと、わかってもらえないようなので。
吉田秋生さんや高野文子さんの顔写真は見つけました。
あと、私が顔を見てみたいと思うマンガ家さんは、いしいひさいちさんと樹村みのりさんぐらいかな。
【画像表示テスト】
infoseekに置いた画像に直リンできるのか?
あ、大丈夫ですね。
これで「画像の倉庫」容量問題は解決♪
infoseekの無料HPスペースは容量が50MB、CGIまで使えるので、おそらく国内最強。
ただ、CGIをぶん回すやつがいるから、午前零時前後はめちゃくちゃ重いかも。
自前の幻泉館サーバに画像を置いて楽天から表示させようとすると、ルータの仕様で自宅から確認できないのです。
それで、ただただ画像倉庫用にinfoseekを借りてみました。
http://gensenkan.infoseek.ne.jp/
80年代には、小学館フラワーコミックスの短編集『ポケットのなかの季節』の第1巻と第2巻が普通に買えたのではないかと思う。
ブロンズ社が倒産した後、その業務を引き継いで仕事をしていたことがあるが、その時にブロンズ社から出ていた『菜の花畑のむこうとこちら』をもらった。
樹村さんの作品はなんだか悲しみのクサビのようなものを読み手の心に残してしまう作品が多いのだけれど、「菜の花畑」のシリーズは明るくてあまり悲痛なエピソードが出てこないので、読みやすい。
この「菜の花畑」のシリーズが樹村みのりさんの代表作と言っていいのかな。
「菜の花畑」の「森ちゃん」みたいな女の子、どこにでもいそうだけど、意外に少ないのです。
無垢な子供の心を持った普通の子。
そう、無垢な子供の心、これが70年代の樹村みのりさんの作品に通じるテーマだろう。
『ポケットのなかの季節』は2冊とも買ったのに、どこかに行ってしまった。
特に一巻目は表紙が片思いをしていた誰かさんに見えたので、結構必死になって古本を探したかもしれない。
元々のフラワーコミックスは手に入らなかったけれど、第一巻の表紙の絵をデザインしたフラワーコミックスワイド版をヤフオクで落とすことができたのだった。
それでふと思いついてgoogleで検索したら、見つけました。
http://www.iff.co.jp/book/c.html
IFF出版部ヘルスワーク協会というところで、短編集を4巻出しているのですね。
樹村さんは「運動」の方に行ってしまったのでしょうか。
それで普通の出版社から本が出ないというのは、考えすぎかな。
『樹村みのり作品集「菜の花畑編」菜の花畑のむこうとこちら』
『樹村みのり作品集「子ども編」悪い子』
『樹村みのり作品集「少女編」海辺のカイン』
『樹村みのり作品集「女性編」母親の娘たち』
各1500円ですが、早速発注いたしました。
まだ読んだことのない作品が入っている模様。
【追記】
いやあ、失敗。
普通にamazon.co.jpで注文できます。
【さらに追記】
もう届きました♪
amazonより速かったです。
樹村さんのマンガを熱心に読んだのは大学生の時、70年代後半です。
私は親戚のお姉ちゃんたちのマンガを読んでいたので抵抗なかったけど、当時むくつけき男子大学生の間で、少女マンガを読むのがはやりました。
石井隆さんのマンガをかっこつけて読むのと同じで、多分にスノッブなところがあったと思います。
ことさらに「りぼん」だったりするわけです。
連中は「りぼん」の付録はどうしたんだろう。
陸奥A子さん、太刀掛秀子さん、田渕由美子さん、一条ゆかりさん、土田よしこさん……。
ああ、懐かしいわ、私もよく読んでたんだ。
私がいた大学の近くに都電の駅(停留所か?)があって、その横を抜けて坂を上ると高級住宅地。
田中角栄さんのお宅の前にある女子大には、高橋留美子さんがいました。
在学中にデビューし、1978年には『うる星やつら』の連載が「少年サンデー」で始まります。
『うる星やつら』というといわゆる「をたく」の発生、80年代のイメージがありますが、70年代の後半に始まっているのです。
もちろん私も楽しく読んでいたのですが、ここまで行くとどうも幻泉館には似あわない。
せっかくだからなぞっておくと、1978年には吉田秋生さんの『カリフォルニア物語』が出現します。
おそらく後年の『BANANA FISH』の方が評価が高いのだろうけど、同じ70年代に呼吸した者として、私はこちらの方が愛着があります。
途中で吉田さんの描く絵が急に変わってしまうのも、ハラハラしました。
男の肉体を描くようになっちゃうんだよね。
ああ、大島弓子さんの『綿の国星』もそのころだ。
当時大島さんは井の頭公園の西側(井の頭公園の間というべきか)にあるパークサイド・マンションにいらしたのです。
いつかあんなマンションで暮らせたらいいなあと思いましたっけ。
それから天才高野文子さんや大友克洋さんが登場するのですが、それもまたいつか。
今並べたような、時代を特徴づけるようマンガ家の名前と比べると、樹村みのりさんはとても地味な印象を受けます。
1980年ごろに起きた、まさにマンガのニューウェーブとも言える大ブレイクからは完全に外れた、旧世代に見えます。
浮浪者と夢を分かちあう子供たちを描いた「贈り物」は、1974年の「別冊少女コミック」に掲載された作品。
世間的には単なるホームレスであるおじさんから、お別れに「天国への切符」を貰う子供たち。
それは人を信じる無垢な心の象徴であります。
その切符をいつまでもポケットの中にしまっている子供たちの、その後を語るページで樹村さんはさりげなく書いている。
> もう一人は
> 72年の年の2月の
> 暗い山で
> 道に迷った
これが連合赤軍事件のことだとすぐにわかる人は、今では少ないのだろう。
1974年当時の「別冊少女コミック」の読者にも、わかる人は少なかったかもしれない。
いつまでも「天国への切符」を大切に持っていたからこそ、子供たちの一人は道に迷ってしまったのだと、樹村さんは言っているようです。
おそらくは彼は同志によって「総括」を要求され、殺されてしまったのでしょう。
樹村みのりさんも、連赤事件を忘れることのできない、いつまでもポケットの中に切符を持ち続ける作家だったのです。
そんなだから寡作だったんだろうなぁ。
もちろん「樹村みのり=連合赤軍」と言っているのではありませんよ。
近頃はそんなことまでベタベタ説明しないと、わかってもらえないようなので。
吉田秋生さんや高野文子さんの顔写真は見つけました。
あと、私が顔を見てみたいと思うマンガ家さんは、いしいひさいちさんと樹村みのりさんぐらいかな。
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あ、大丈夫ですね。
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infoseekの無料HPスペースは容量が50MB、CGIまで使えるので、おそらく国内最強。
ただ、CGIをぶん回すやつがいるから、午前零時前後はめちゃくちゃ重いかも。
自前の幻泉館サーバに画像を置いて楽天から表示させようとすると、ルータの仕様で自宅から確認できないのです。
それで、ただただ画像倉庫用にinfoseekを借りてみました。
http://gensenkan.infoseek.ne.jp/
2003-10-07 00:00
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コメント(9)
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TITLE: Re:樹村みのり「贈り物」(1974年)(10/7)
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幻泉館主人さん、こんにちは!
今日の日記は懐かしい名前がいっぱいでウルウルしちゃう。
太刀掛秀子さん、かなり前ですが
私の日記でもちょっとだけ話題になりました。
大島弓子センセ、「綿の国星」は大大大好きでしたー。
樹村みのりさんも読んでいたと思うのですが、
私の中では印象が薄かったですね。
私、たぶん幻泉館主人さんの後輩です。
もしかしたら遠い昔、
キャンパスですれ違っていたかもしれませんねー。(笑)
by うるとびーず (2003-10-07 11:08)
TITLE: Re:Re:樹村みのり「贈り物」(1974年)(10/7)
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うるとびーずさん、こんにちは♪
そうですか、同じ学校なんですか。
私はさらに昔に筑紫哲也さんや久米宏さんがいらしたはずの学部なので、本部キャンパスです。
学部の共通授業ではサッカーの岡田クンがいたのを、なんとなく覚えています。
すれ違ってるとは思いますが、あの人数ではねぇ。
テレビ版『青春の門』が本部キャンパスでロケを行なったのですが、番組を見るとジェシ・コリン・ヤングのポスターがしっかり映っちゃってました。
ああ、音プロ研が森田童子のプロデュースをしていたので、そのポスターも多かったですね。
by 幻泉館 主人 (2003-10-07 12:18)
TITLE: Re:樹村みのり「贈り物」(1974年)(10/7)
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★★幻泉館 主人さん
>うるとびーずさん、こんにちは♪
>そうですか、同じ学校なんですか。
ということで、先輩!
日記リンクいただいて行きますねー。(笑)
これからもどうぞヨロシク!
by うるとびーず (2003-10-07 17:23)
TITLE: Re:Re:樹村みのり「贈り物」(1974年)(10/7)
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恐縮です、後輩さん。
メール発射しております。
by 幻泉館 主人 (2003-10-07 17:27)
TITLE: Re:樹村みのり「贈り物」(1974年)(10/7)
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どういう訳かこの人の漫画持ってます。
サコとヴァンゼッティの事を書いた漫画です。
by ジョンリーフッカー (2003-10-07 21:16)
TITLE: Re:樹村みのり「贈り物」(1974年)(10/7)
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吉田秋生さんの『カリフォルニア物語』
あ!これもあります。
陸奥A子、何故かこれもあります。
ふっふっふ
by ジョンリーフッカー (2003-10-07 21:19)
TITLE: Re:Re:樹村みのり「贈り物」(1974年)(10/7)
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ジョンリーフッカーさん、こんばんは♪
くらもちふさこ、チャンプルーズ、ロッキーホラーショーと、これはやっぱり同世代なんでしょうね。
私の場合、少女マンガはほとんど手元に残っていないので、また読もうとすると大変です。
by 幻泉館 主人 (2003-10-07 21:32)
TITLE: Re:樹村みのり「贈り物」(1974年)(10/07)
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こんばんは、はじめまして。「樹村みのり 贈り物」で検索してたどり着きました。22歳の若僧ですが、樹村みのりさんの作品が大好きです。サイトの他の記事も楽しく読ませていただきました。
『贈り物』でのあの台詞が連合赤軍のことを指していたことをここで知りました。教えていただいたような気分で、感謝したく思います。
樹村さんの漫画は、学生時代に西落合の図書館に置いてあった作品集で知りました。最近になりその作品集を集めているのですが、「子ども編」だけが手に入らずに残念です。復刊してくださるとありがたいのですが…。
樹村さんの顔写真は『リアル国家論』という本にあるらしいです(私は未見なのですが)。
それと、蛇足なのですが、僕もおそらく幻泉館主人さんの後輩です。偶然のことながら不思議な感慨を覚えました。
by しんく (2007-12-17 00:32)
TITLE: Re[1]:樹村みのり「贈り物」(1974年)(10/07)
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しんくさん、こんにちは♪
ご来館&コメントありがとうございます。
>『贈り物』でのあの台詞が連合赤軍のことを指していたことをここで知りました。
本当は私の思いこみだけかもしれません。
でも、初めて読んだ時から自然にそう思ったのです。
>樹村さんの顔写真は『リアル国家論』という本にあるらしいです(私は未見なのですが)。
ほぉ。
立ち読みしないと。
のんびり市の本屋さんにはないかな。
>それと、蛇足なのですが、僕もおそらく幻泉館主人さんの後輩です。偶然のことながら不思議な感慨を覚えました。
集まり散じて人は変われど。
キャンパスの雰囲気も変わったんでしょうね。
テレビや新聞に知っている顔が出てくると、お互い年とったなあと思います。
今でも大隈講堂の写真を見ると、ちょっと胸が熱くなります。
by 幻泉館 主人 (2007-12-17 14:16)