悪役レスラーは笑う [書籍と雑誌]
近所のブックオフを覗いた時に、投げ売りされていた岩波新書を何冊か買った。
その中の一冊、森達也さんの『悪役レスラーは笑う ――「卑劣なジャップ」グレート東郷――』を読んだ。
おもしろかった。
悪役レスラーのことをヒールと呼ぶ。
「heel」だよなと思ってリーダーズ英和を引いてみる。
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4a 《口》 卑劣漢, げす, できそこない, くず, いやなやつ; _《俗》 こそ泥, けちな犯罪者; 《カーニバル俗》 しけた商売人, サクラ (shill).
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アメリカで徹底的なヒールとして活躍したグレート東郷は、日本のプロレスの実質上の産みの親でもあった。
これは知らなかった。
ところが、その人物がどうにも謎が多い。
それを森さんが調べるという、本来はドキュメンタリー作品として映像化するはずだったという企画である。
だいたいグレート東郷はどのような民族的出自なのか。
それすら怪しい。
膝あての付いた田吾作タイツに下駄というスタイルは、醜く、そして懐かしい。
思えば、プロレスを見ていないなあ。
森さんは同じ歳なので、いろいろな部分で似たような体験をしてきているようなのだが、プロレス体験は完全に時期がずれている。
私がテレビでプロレスを見たのは、力道山が亡くなった頃まで。
つまり小学校低学年ぐらいで終わっている。
台風が来ている最中に、アンテナを直すためにオヤジ様が屋根に上ったことがあった。
ファイトが佳境に入ると、オヤジ様はおぅおぅと後ろに体を逸らし、おばあちゃんはおぅおぅと前に屈んだ。
それ以後は、学生時代に猪木対アリ戦を観るために、大学近くのizumatsu丼の下宿へぞろぞろと行ったぐらいではなかろうか。
60年代当時、プロレスラーの国籍や出自は、公には伏せられていた。
ガイジンの卑怯な反則攻撃に耐え忍び、最後に必殺技でニッポンのレスラーが勝利するというカタルシス。
ナショナリズムが如何に簡単に盛り上がり、利用されるか。
この本の脱稿は2005年10月29日。
熱狂的な小泉人気に対して本当に危機感を抱いていた森さんが、薄っぺらな民族主義を一所懸命に批判している。
そして2011年2月のニッポンは民主党の内閣なのだが、なぜか再び小泉路線を走っているのである。
→幻泉館日録:CHRONICLES #33 ディランとプロレス
→幻泉館日録:CHRONICLES #34 ディランとゴージャス・ジョージ
悪役レスラーは笑う―「卑劣なジャップ」グレート東郷 (岩波新書 新赤版 (982))
- 作者: 森 達也
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2005/11/18
- メディア: 新書
タグ:森達也
こんばんばっくどろっぷ♪
プロレスといえばメキシコの神父様かなあ。
みなし子たちを養うのにプロレスで稼いでいた神父様。
最近はちょっと大阪プロレス見てみたいです。
by あんときのいのき丼 (2011-02-10 22:12)
あんときのいのき丼さん、こんばんワンハンド・バックブリーカー♪
おお、ルチャリブレでんな。
基本的な形が、プロレスと左右逆なんだそうです。
大阪プロレスね、あれも系だそうで。
笑いが欠かせない?
by 幻泉館主人 (2011-02-10 23:07)