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監訳者・品川四郎さん,この本はもう読みましたか? [書籍と雑誌]


古い日記が出てきたので、アップしておきます。
11年前。
ブログや日記システムではなくて、htmlタグを手で打っていたころの日記です。
書評サイトやろうと思って、Geocities(US)を借りたのかな。

本文中の、♪きむらかずしさんの「メイキング・オブ・ブレードランナーの間違い探し 」というページはまだちゃんと生きてます。
たいしたものです。

 →メイキング・オブ・ブレードランナーの間違い探し

この版はもう入手できないようです。
amazonのカスタマーレビューで必死に擁護している人がいるのが笑えます。
関係者でしょうか。

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November 5, 1997

監訳者・品川四郎さん,この本はもう読みましたか?


「メイキング・オブ・ブレードランナー」 ポール・M・サモン 監訳・品川四郎
 ソニー・マガジンズ(1997年 定価3914円:本体3800円+悪税)

 雑誌はともかく,悪口を言いたくなるような書籍は取り上げるつもりがなかった。
 いいかげんな雑誌より,ちゃんと作った本がもっと売れた方が良い。
 それにこのHPは幻泉館主人の貴重な資源なんだから,無駄遣いなどしたくない。
 でも,こういうダメな本を買って後悔したことは,やっぱり公言しておいた方が良いようだ。
 いいかげんに作ったダメな本ははっきりさせておきたい。

 幻泉館主人はディックの小説が大好きだ。
 ディックとは世界が違うが,映画「ブレードランナー」も悪くない。
 ビデオも「完全版」「最終版」の両方を買わされてしまった。
 まあ,「ブレードランナー」のファンなんだろう。
 本屋さんでこれを見つけた時,ちょっと高いので少しためらったが,結局は買ってしまった。
 
 で,すぐに後悔した。
 なんとも読みにくいからだ。
 これは翻訳された文章の水準の低さと,いいかげんなブックデザインが原因である。
 版面がでかくて余白と行間が少ない。
 ひとむかし前に素人がベタベタ打ったワープロ文書で,こんなのがよくあった。
 たとえば雑誌のページをレイアウトしたことはあるが,単行本は作ったことがないデザイナーさん。
 そんな人物像が浮かんでくる。
 ぱらぱらと雑誌をめくることはあっても,本は読まない人によるデザインだ。
 
 次に,明らかな誤訳の一例。
 14ページ,7行目から。映画「ブレードランナー」について述べた後。
 
 >こういった映画は『2001年宇宙の旅』以来のものだ。両方とも原作者のフィリップ・K・
 >ディックのパラノイドと、思想と現実と虚実の交錯というモチーフを見事に表現し、現代
 >の文学的SFを代表する洗練された感覚を映し出している。
 
 これでは『2001年』の原作者がディックだということになってしまう。
 もちろん「両方とも」は「パラノイド」と「モチーフ」に掛かるはずである。
 まてよ,それでもおかしい。
 「ディックのパラノイド」と,「思想と現実と虚実の交錯というモチーフ」の「両方とも」とはいったいどんな意味なんだ?
 
 paranoidなら,普通は形容詞だな。
 原文は Dick was paranoid …… と書いてあったのだろうか?
 たとえば Dick was sick …… を,ディックのシックとは訳さないなあ。
 「ディックの妄想」とでも言いたいのだろうか。
 both A and B の A は,「ディックのパラノイアと思想」が正しそうな気がする。
 それが正しければ,読点の打ちかたがまずい。
 原文をまったく見ないで,ここまで言っていいのかな。
 
 続けて both A and B の B(たぶん)。
 「現実と虚実の交錯というモチーフ」って何だ?
 「虚実」ってのは「虚構と現実」だぞ。これは論理的ではありません。
 もしかしたら訳者は「虚実」を「虚構」の意味で使っていないか?
 
 ほとんどパズルのようにして,本来の文章の意味を想像してみた。
 原著をまったく見ていないから,この翻訳は本当に正しいのかもしれない。
 つまり,原著の言葉が壊れているという可能性は皆無ではない。
 しかし,たぶんこんなものだろう。
 彼は(あるいは彼女は)文章中の both A and B 意味がわからない。
 彼は(あるいは彼女は)文章中の A, B and C のような並列もわからない。
 当然文の意味はよくわからないから,英単語をそのままカタカナ語で残しておく。
 したがって,おそらく
 彼の(あるいは彼女の)英語力では英検2級の試験には合格しないし,
 彼は(あるいは彼女は)予備校の模擬試験を受けても偏差値55を超えることはできない。
 
 英語の苦手な高校生なら,これはこれでまったく問題ない。
 楽しい高校生活を送ってくれたまえ。
 しかし,こんな翻訳家がいたら大問題だ。
 
 実は幻泉館主人は,過去にこんな人物から大迷惑を被ったことがある。
 急ぎの仕事で,「翻訳家養成講座の教師」という触れこみの人物に翻訳を依頼した。
 ところがこのセンセイの日本語訳の意味がわからない。
 原文に当たってみると,そこには必ず関係詞か仮定法が出てきた。
 彼は関係詞や仮定法が使われると,構文がわからなくなってしまうのである。
 (どこの講座か知りたい人は E-MAIL で問い合わせておくれ。新聞で宣伝してるやつだ。
 ついでにそのセンセイの名前も教えてあげよう。)
 
 この本の訳者も,彼に負けず劣らず英語と日本語の「両方とも」弱い人間である。
 奥付は「3月21日 初版第1刷」なので,増刷分は直してあるのかもしれない。
 
 監訳者の「日本版あとがき」が傑作と言えば傑作だ。
 「いかに翻訳を読みやすく分かりやすくできるか,ということに配慮した」のだそうだ。
 本当に読んだの?
 「写真選びにばかりうつつを抜かしていた」と書いているのは正直でよろしい。
 が,はっきり言って欠陥商品である。
 品川四郎さん,原著読んでみたいから,このゴミと交換してくれないか?
 
 みんなはこんな翻訳本を,絶対に買っちゃいけないよ!
 
 [ 追記 ]
 
 監訳者の品川四郎さんてどんな人なんだろうと思って infoseek で検索してみた。
 それはわからなかったのだが,おもしろいものがヒットした。
 きむらかずしさんの「メイキング・オブ・ブレードランナー」間違い探し。
 この本,「ブレードランナー」ファンの間では間違いが多いことで有名なんですね。
 やっぱり見る人はちゃんと見てるわ。
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9条を殺すな!

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