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CHRONICLES #28 (Bob Dylan) [ボブ・ディラン『クロニクルズ』]

ディランはそのころまで、書物や作家に夢中になったということはなかったのだが、物語は好きだったと言っています。
mythical(神話的な、伝説的な、架空の)といった語を何度も使って、昔お気に入りだった物語に触れています。

エドガー・バロウズ(Edgar Rice Burroughs)
 裸のランチじゃありませんよ、ターザンです。
 →TARZAN
  
ルーク・ショート(Luke Short)
 19世紀のガンマンではなくて、1975年に亡くなった西部劇作家だと思います。
 →Luke Short (Frederick Dilley Glidden)

ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)
 →Jules Verne Page

H.G.ウェルズ(H. G. Wells)
 →H.G.ウェルズ(1866-1946)

1950年代の中学生が夢中になって読んだ大衆小説という感じですね。
少年ディランはこういう読み物が好きだった。

私も中学生ぐらいの時にフレデリック・ブラウンを読んで、もう少し大きくなってからP.K.ディックに進んだりしたのでした。
ああ、図書館にあった「SFマガジン」で筒井康隆さんの連載『脱走と追跡のサンバ』を読んだな。

でも、ディランはフォークソングを発見したのです。
フォークシンガーなら、こういった本まるごと一冊を、数行の詞で歌うことができる。
ディランがここで言っているフォークソングは、バラッド(ballad)と呼ばれるものに近いようです。
物語詩に節をつけた流行歌、ぐらいでしょうか。

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どうしたらある人物や出来事がまともなフォークソングになるのか、説明するのは難しい。
たぶん、公明正大で正直な性格といったものと関係があるのだろう。
つまり、勇敢さといったものと。
アル・カポネはギャングとして成功してシカゴの地下世界を支配することができたが、誰もカポネの歌など作らなかった。
どのような点においてもカポネはおもしろくないし、英雄でもなかった。
カポネではつまらない(frigid)。
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バラッドというと無法者を歌っているような気がしますが、やはり感情移入できる気持ちのいい人物でなければ、歌の主人公にはならないわけです。
高倉健さんの時代の東映ヤクザ映画は歌になるけれど、『仁義なき戦い』シリーズでは歌になりません。

ディランはカポネのことをボロクソに書いてます。
カポネは凶悪犯や暴漢といった類いのもので、歌の中で名前を与えられるほどの価値もない。
それに対して「美少年フロイド(Pretty Boy Floyd)」は、わくわくさせてくれる。
彼のことを歌った曲は、本当に血肉を持っているし、人間というものを表現して、感動的だ。

ディランがアル・カポネに対峙させた無法者「美少年フロイド」はオクラホマ州で活躍した義賊。
ディランはそう書いていませんが、ウッディ・ガスリー(Woody Guthrie)の歌のことを言っているのです。

 →Woody Guthrie Lyrics: Pretty Boy Floyd

 →Digital Tradition Mirror: Pretty Boy Floyd

 →Pretty Boy Floyd 美少年フロイド

ウッディ・ガスリーとレッドベリーに捧げられた『Folkways: A Vision Shared』では、ディランはこの曲を選んで歌っています。

 →11月24日付幻泉館日録 我が祖国


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